小さい頃から「自分探し」という言葉を耳にしていた気がする。しかし、テレビか何かで「自分探ししてる人はバカ」と話すのを聞いて以来、私はこの言葉に違和感を覚えるようになった。
私なりに考えると、人間は社会とのつながり――人とのコミュニケーションやアート、エンターテイメントとの関わり――がないと、まるで水のように形を持たない存在になるように思える。重力のない場所で水が定まらない球体のように、無定形の状態だ。
逆に、コップやお皿に入った水のように、社会や作品との関わりを持つことで、私たちは自分の形を形成していくのだろう。反対、共感、感動、悲観、怒り…さまざまな感情を経験することで、個としての輪郭が生まれる。
だから「自分探し」と口にする人を見ると、感情が動く経験や学びが少ないのかもしれないと感じる。しかし一方で、旅や異文化体験によって人生観が変わることもある。環境が思考に与える影響を考えると、「自分探し=浅い」と決めつけるのも違うのかもしれない。